MY BLUEBERRY NIGHTS/ウォン・カーウァイ

大阪梅田にて。とっても良かった。映像の切り取り方やテンポが独特で面白い。特にブルーベリーパイにアイスが溶けて溢れるように流れていく映像は色気すら感じた。ストーリーは人の愛しているから憎い、憎いけど愛しているといった弱い部分を肯定的に捉えているようにおもった。
冒頭、ジュード・ロウが営む飲食店にノラ・ジョーンズがやってくる。浮気されて傷心のノラ・ジョーンズはブルーベリーパイを食べながらその胸の内を語るのだが、このシークエンスがすごく良い。店には人々が忘れていったたくさんの鍵を入れている瓶がある。なぜその鍵を捨てずに置いているのか聞くと、「もし鍵を捨てたら、その扉は永遠に開かなくなってしまう。僕にはそんなことはできない」と答える。素敵な言い回しでクラクラしてしまう。このシークエンスだけでぐっと引き込まれたのだけど、作品全体を通してこうした心に残るセリフが散りばめられていて良かったな。
また冒頭、ジュード・ロウは言う。ブルーベリーパイは理由もなくいつも注文されずに残ってしまう。けれど必ず一つはないと寂しいので作ってしまう、と。
ストーリーに出てくる人物は、みんな愛する人を憎んでいる。けれど彼女らは離れることができずにいる。愛して、憎んで、最期に喪失して彼女らは愛する人の大切さを知り、前へ進んでいく。人の感情である愛憎はブルーベリーパイのように理由がない(わからない)もので、えてして失ってから大切に気づくことになる。私自身もそういう経験はあるし、それは自分を変える経験だったとおもう。それが最後のセリフ「君は変わった?それとも僕が変わっただけかな」に繋がっていく。
そこから作品のメインビジュアルになっている、カウンターに伏したノラ・ジョーンズジュード・ロウがキスをするシーンがクライマックスを飾る。おすすめ。