天然コケッコー

シネ・リーブル神戸にて。監督は山下敦弘。脚本は渡辺あや。今年夏一の映画。よかったです。島根県の田舎町に越してきた少年と、彼の同級生となる少女のお話。小学校、中学校あわせて7人しかいない小さな村の一年を通して物語りは進んでいく。
この映画は、ストーリー自体は最後まで大きな場面を迎えることはないのだけれど、ひとつひとつのシークエンスが繊細で切なかったり、くすりと笑ってしまうおもしろさがある。その中心にいるのが主人公のそよ(夏帆)である。そよがね、良いんだ。まっすぐにものごとを見つめて捉えようとしているその姿勢が。姉妹同然の子供たち、学校の先生たち、家族、そして東京からやってきた少年。仲むつまじく暮らす生活に少年はそよに変化をもたらす。そよは少年と一緒に居たいがために六歳の女の子を放ったらかしにしてしまい、女の子は病気になってしまう。それをそよは「恥ずかしい」と自分を恥じる。この年頃の女の子ならそういう新しい感情に直面し、葛藤するのだとおもう。少年もこの歳でありがちな、がさつで無神経だけれど繊細な感情を持っていたりしておもしろい。
そよや少年が持っていたものは私は失くしてしまった。大人になれば嘘もつくし駆引きもする。思ってもないことを言わないといけないこともある。だけど彼女らはまっすぐにものごとを見つめていて、自分自身に嘘がない。だからこそすれ違ったり悩んだりもする。大人の複雑な関係であったり、子供同士の仲間はずれ。けれど、その心はとてもきれいだとおもった。
また方言がよかった。音がとてもきれいで会話が心地良い。自然とその音も良くて、何気なく映る自然にはっとさせられるシークエンスがたくさんあった。ありがとうを言いたくなる映画。おすすめ。