"The Sience of Sleep"(恋愛睡眠のすすめ)/ミシェル・ゴンドリー

yurara19862007-06-07

神戸シネ・リーブルにてレイトショー。なきそうなくらい切なくて可愛いらしくて、不思議な余韻が残った。すごく良い。ミシェル・ゴンドリーの泉のように湧き出るアイディアと独特の世界観を創る音楽。1秒タイムマシン、災害論カレンダー、植物の乗せたノアの箱船、ちょっと可笑しなぬいぐるみのポニー、セロファンのおふろ、段ボールでできたステファンTVのスタジオ。すべてのアートワークがキュートでくすりと笑いたくなるようなシークエンスばかり。すべてが瑞々しい。素敵。
主人公のガエル・ガルシア・ベルナルは大人になりきれないオトコノコ、である。想像の中で、意中の相手と架空の男が仲良くしてることに嫉妬し、勝手に失望する。男から見ると情けなく仕方のない子供なんだけれど、男なら少なからず経験があると思う。例えば意中の人が知らない男と楽しく食事を取っているところを見て、勝手に失望し暗い気持ちになる。その気持ちは恋人がいるなら恋人への束縛に。いなければ自分自身への束縛になる。
子供の頃、嫌なことがあれば布団を被って自分が観たい夢を創った。それは夢と現実いり混じった不思議な世界。でもそれは大人になるにつれて見えなくなった。ガエルは大人になってもなお夢と現実を彷徨っていて、観客として客観的にその様子を観ると情けなく見えるのですが共感も覚えてしまう。だって現実は上手くいかなく厳しい。だから自分を客観的に捉える作業は辛く避けたくなる。
「みんな同じ。でも君だけが違った。ただ君が僕を好きになってくれないだけなんだ」
夢は、必ず覚める。ガエルのセリフだけれどやっぱり現実は厳しい。
でも面白いことに前作の「エターナルサンシャイン」の記憶の中の彼女もだけど、夢の中の彼女はいつだってガエルに協力的で勇気を与えてくれるんだよね。嬉しそうにプロポーズを迫る彼女にガエルは言う。
「Would you marry me?」
「Yes!」
告白に素直に答えられなかっただけで、本当は彼女はガエルのことが好きである。やはりガエルの夢は自分自身を束縛していたのです。
物語が夢と現実に明確な区別を与えないからこそ(夢と現実を対立として描かない)、境界線のない世界が無制限に広がっていって面白かったし切なかった。おすすめ。