この世の限り/錯乱

なんとなくラジオを聴いていたところ、椎名林檎の曲が流れてきた。どうやら最新の曲らしい。もともと椎名林檎の歌は好きなんだけど、東京事変というバンドを組んでからは新曲の発表があまりなく、興味が離れていた。どうやら今回の最新曲は東京事変としてではなく椎名林檎と兄の椎名純平名義の曲らしい。聴いていると、これがなかなかいい。相変わらずの可愛らしい声、深遠な英歌詞。サビにさしかかり、彼女は熱唱する。
「And take this point of view/Nothing is old,and Nothing is new」
ポップな曲調でそれだけで楽しくなるのだけど、それ以上に強いお酒のような歌詞なので聴いてクラクラしてしまった。冒頭で
「この世に限りはあるの?もしも果てが見えたなら、どうやって笑おうか、たのしもうか…もうやり尽くしたね。じゃあ何度だって忘れよう。そしてまた新しく出会えれば素晴らしい。さようなら 初めまして」
という歌詞がある。普通なら「限り」があるならそれを恨んだり悲しんだりすると思う。私ならそうだ。しかし彼女は「限り」を受け止め、何度も忘れ何度も出会うという選択をする。「限り」を眼の前にして、忘却と出会いの繰り返しの「永遠」。それを軽やかに唄う彼女は、強く美しい。
この曲を聞くと過去のアルバム「唄ひ手冥利」の一曲「玉葱のハッピーソング」を思い出す。もちろん、この曲も椎名純平と一緒に歌っている。当時はヘビーローテーションで聞いていた一曲でもある。底抜けに明るい曲で、高校生の私は子供みたいな顔をしながら聴いていた。アホである。でも本当に好きな曲だった。けれど「この世の限り」には「玉葱のハッピーソング」にはない、椎名林檎の世界の捉え方が現れていて更に惹き込まれてしまう。
カップリング曲の「錯乱(ONKIO ver.)」と「カリソメ乙女 (HITOKUCHIZAKA ver.)」の2曲も魅力的で花魁の世界を思いおこさせられる。ある種の危機感というか、切迫感が緊張を引き起こして、ぞくぞくする。
カルタシスを味わいたい人へ、お勧めの一枚です。

この世の限り

この世の限り